[2]社会のすみずみまで人権を
【はじめに】
人権小国。
私たちは、日本の人権状況をこう認識しています。
なぜならば、日本社会が、経済成長、すなわち物質的な豊かさを社会全体で追求する余り、横並びを求め、多様性を尊重してこなかったからです。そして、人権であれ、環境であれ、社会的倫理を二の次として軽視してきました。
しかし、本当の幸せが何かを考えてみると、自らが他者から尊重され、自らも他者を尊重するということがなければ、いくら物質的な豊かさを得ても、幸せになったとは言えないでしょう。この個人が個人を相互に尊重するという姿勢こそ、人権なのです。
つまり、人権というのは、誰もが幸せを実感できる社会を創る上で、社会の基礎部分になります。だから、法律や社会制度が人々を差別し、人権を侵害するものであれば、それを積極的に改革しなければなりません。
まず、ジェンダー(社会的・文化的に形成された性差)から見てみましょう。今の日本社会には、まだまだ性別によって社会的役割を分けようとする固定観念や 偏見が残っています。教育行政においても、東京都を始めとして「女らしさ」「男らしさ」を子どもたちに押し付ける傾向があります。私たちは、誰もが個人と して尊重され、個性と能力を開花させられ、社会的・文化的な性差への偏見のないジェンダーフリー社会の実現を望んでいます。
また、様々な立場の人々が共に暮らしているのが、現実の社会です。したがって、人権と一口に言っても、その範囲は多岐にわたります。私たちは、例え次に具体策を明示していなくとも、社会のすみずみまで人権が保障されるよう、最大限の努力をします。
なかでも、急速に進んでいる社会の電子化は、多様性よりも統制を志向する政府の姿勢と相まって、新たな監視システムとなるのではないでしょうか。盗聴法や住民基本台帳ネットワークなど、監視システムのインフラ整備に、断固として反対・廃止します。
そして、社会制度の中でも、もっとも密接に人権とかかわってくるのが、司法の分野です。歴史に思いをいたすとき、人権を守るための機関であるべき司法自ら が、人権侵害の主体であったことは珍しくありません。私たちは、透明化と市民コントロールを進めていくことで、本来期待される役割のとおり、人権の砦とな るよう司法制度を民主化します。
さて、人権は、日本に住む人々だけでなく、「世界人権宣言」(Universal Declaration of Human Rights,1948)でも示されているように、世界中のあらゆる人々にもあまねく保障されねばなりません。
しかし、アメリカや日本のように、経済力や軍事力の強い「先進国」と呼ばれる国々は、しばしば人権を口実にして、他国、特にいわゆる「途上国」に介入します。
かつて石橋湛山(1884-1973)は、日本がヴェルサイユ講和会議に際して人種差別撤廃を主張した際、自らの差別行為を全く改めもせずに、そうした主張をする権利などない、単に冷笑を買うだけだと厳しく批判しました。
私たちは、世界各地の人権侵害を改めさせ、人権を口実にしたご都合主義の介入を止めさせるためにも、日本社会における人権保障の確立を急務と考えます。
【政策】
1.あらゆる性差別をなくし、ジェンダーフリー社会を創ろう
- 婚姻及び出生などに関する差別を解消するため、婚姻年齢を男女ともに18歳とし、選択的夫婦別姓制度を導入し、再婚禁止期間を廃止し、離婚時の財産分与を原則2分の1と明記し、非嫡出子に対する差別を廃止するなど、民法を改正する。
- 女性に対する身体的・精神的・性的暴力をなくすため、接近禁止命令の半年以上への延長、加害者への公的更生プログラムの確立など、DV防止法を改正する。
- 職場及び学校におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するため、法律で禁止し、被害を受けずに働き学ぶ権利を規定し、迅速で実効性のある公的救済機関を設ける。
- 社会的・文化的な性差への偏見をなくすため、ジェンダーフリー教育を進めるとともに、公務員へのジェンダーフリー研修を実施する。
- 国内での外国人女性に対する人身売買、性的搾取をなくすため、被害者への救済制度を整えるとともに、雇用主やブローカーの罪を厳罰化する。
- 性的少数者(ゲイ・レズビアン・インターセックス・性同一性障害等)を有する人々が雇用や社会保障など生活全般において不利益・差別を受けることがないよう、戸籍変更をより容易にするなど、一層の法整備を進める。
2.社会の多様性と人権を広げよう
- すでに批准している人種差別禁止条約に基づき、差別行為を禁止するための法律を制定するとともに、法務省から独立した差別被害の救済制度をつくる。
- アイヌ民族について、先住権、自決権、先住自治特区、過去の日本政府の行為についての損害補償などを定めた基本法(アイヌ民族基本法・仮称)を制定する。
- 在日韓国・朝鮮・台湾人などの定住外国人について、参政権及び公務就業権を認めるなど、日本国民と同等の権利を確立するとともに、外国人登録証の常時携帯義務や再入国許可制度など、不利益的な施策を撤廃する。
- 盗聴法(通信傍受法)、個人情報保護法、住民基本台帳ネットワーク、公安調査庁など、人々の監視につながる監視立法、社会制度、政府機関を廃止する。
3.司法・警察にも民主主義を持ち込もう
- 裁判官の人事について、裁判所・検察・法務省の間での異動(判検交流)を廃止し、すべての裁判官を10年の任期で弁護士から採用する法曹一元制度を導入する。
- 行政訴訟(政府や地方自治体に対する住民訴訟)を手始めに、有権者から選ばれた陪審員による陪審制度を導入する。
- 行政訴訟について、原告適格を住民・NGOなどに広げる。行政機関に対しては、文書の提出義務と訴訟期間中の行政執行(ダム建設など)の原則停止を定める。
- 犯罪被害者に対しての一層手厚い支援制度を早急に整える一方、すでに批准している拷問禁止条約(残虐な刑罰を禁止)に基づき、死刑を廃止する。
- 警察の犯罪検挙率を向上させるため、市民監視部門(公安部局)を大幅に縮小し、その人員・予算を犯罪捜査部門(刑事部局)に振り向ける。
- 情報公開の拡大と外部監査機関の設置により、警察の裏金づくりを一掃する。